スラマッソレー。最近は手持ちのSurface Laptop3とSurface Goをいじり倒して、最適な作業環境構築にいそしむピータックです。ストレージもDropboxからGoogle Driveに引越完了しました。いままでその能力を出し惜しみしていた彼らですが、この1週間の隔離期間で全力を出せる環境を整えてあげた感があります。
シンガポールのホテルでの隔離も9日目となり、折り返し点を越えた感がありますが、やりたいことがまだまだ積み残っている気がしてます。ただ、いつも以上に時間があると思うと、ついついPCの設定だったりとか、クラウドの中身の整理だったりを丹念にやってしまいます。ただ、そういう時間をたっぷり使って、NUS(シンガポール国立大学)のSchool Handbookを読み込んだり、Googleのいろんなツールを使いこなそうと試行錯誤しています。そして、こういうことに取り組むようになったのも、少なからずインターン先での経験が影響しているかと思います。
インターン先が決まった際に少しこちらのブログでも触れましたが、ピータックは7月にNUS入学となるのを見越して5月末に新卒で入社した会社を退職しました。しかし、昨今のCovid-19の影響を受け、NUS入学が12月末に延期となり、そのGapTermを埋めるため、タイにおられたNUSアルムナイのご紹介でとあるFintech系のスタートアップ企業でインターンシップを行うことができました。ご紹介いただいたアルムナイの方には感謝しかありません。
正直、それまで働いていた組織が非常に伝統的な日系企業であったため、インターン先は企業文化もスピード感も大きく異なり、MBAに行く以上に自分に刺激を与えられたのではないかと感じています(まだ入学すらしてないですが)。ちなみに、NUSが今年(去年からなのかな?)猛プッシュしている授業にLaunch Your Transformation(自己変革の開始)という授業があるのですが、このインターンシップは想像した以上に「自己変革」の契機となるものでした。
具体的にどのような仕事をしたか、などはここでは取り上げませんが、このインターンシップで得られた成果、また、そこで自分が強く感じた課題をここで整理しておこうと思います。
成果① 様々なロールモデルとの出会い
インターン先で出会う人たちは、これまで出会ったことのないキャリアの積み方をした人たちでした。インターン前の職場は、基本的に新卒からその職場で働いている人がほとんどで、中途採用はあれど、数は非常に限られていました。また、ジョブローテーションを定期的に繰り返すことで、組織内のいろんな経験を積めるようになる一方で、社外でも通用する汎用的な専門性を持った人はそこまで多くなかった気がします。一方で、インターン先の人達は、厳密なジョブディスクリプション(職務記述書)に沿って採用された方がほぼ全てでした。そりゃそうですね、企業の成長に応じて新たに必要となるポジションの人間を採用していくのですから、そのポジションにふさわしい能力を有する人間を採用することになります。
スタートアップ企業にとってこれは当然の仕組みなのですが、新卒から大企業で働いてきた自分にとっては、Financeのプロはこの人、Productのプロはこの人、Legalのプロはこの人、というように、自分の専門性で渡り歩き、その分野で飯を食っている人が集まる職場というのは、人の入れ替わりが少なく、隅々まで分業化が行き届いた職場で働いていた自分にとって非常に新鮮な出会いでした。そして、「専門性を持つ」ということはこういうことなんだ、と頭と体で理解しました。
成果② 0から1を作り出す経験
また、何も仕組みがないところで0から仕組みを作る、というのは得難い経験でした。新たに財務部門のある仕組みを作るというプロジェクトに関わらせてもらったのですが、一つの仕組みを作るということはその前後の工程に影響を及ぼすだけでなく、その仕組み如何では事業部全体のパフォーマンスに影響を与えることになる、というのは頭では理解していても、実感を伴っていませんでした。また、そういう仕組みを取り入れるには、利用するなるべく多くの人を想定して、多くの人を巻き込みながら組み立てていく必要がありました。
インターン先で聞いた言葉で、「最初から正しいことをする」というものがあります。聞いたときは、「非常にエンジニア的な言葉だな」と感じたのですが、それはアナログな仕組みづくりにおいてもすごく当てはまる言葉だとじわじわ実感しています。最初に導入した仕組みやプロセスが正しいものでない場合、そのコストは、仕組みやプロセス導入が遅れることによるコストなどと比べものにならないほど大きなものとなり、その仕組みがプロセスが前後の工程と密接に連関していればしているほど、そのコストは積み増されます。これはもちろん、完璧な仕組みやプロセスが完成するまでいくらでも時間を使っていい、と言ってるわけではないですが、迅速な仕組みやプロセス導入が求められる際にも、企業の戦略を踏まえた将来像まで考慮して、仕組みやプロセス導入が必要になる、ということだと思います。
成果③ IT化された職場環境への適応
非常にIT化されたインターン先での経験はIT化されていく今後の職場環境への適応力を高めてくれました。これは付随的な要素かなとも思ったのですが、現在のような状況を鑑みると、なかなか見過ごせない要素であると思い、成果に加えました。もともと、Slackどころかテレビ電話会議すらなく、毎日大量の書類をプリントアウトする職場で働いていた自分には、当初、大量にSlackが飛び交い、文書がすべてクラウド化され、毎日のようにテレビ電話会議が30分刻みでGoogle Calenderにセットされていく職場は馴染むのに少し時間を要しました(最初に支給されたMacbookProのセッティングですら音を上げそうになっていたくらいですから)。しかし、そんな職場に3か月身を置くと、それらのサービス(いわゆるSaaS:Software as a service)がないと、不便で仕方なく感じるようになりました。これは、想定していなかったものですが、予想以上に大きな成果であり、今後の自分の作業効率を大きく高めてくれると思います。
一方で、MBAに向けて明確に特定された課題もありました。
課題① 複雑な要素が入り組んでいる組織の中で課題を特定し、課題解決のための仕組みを作る能力の不足
インターン先の企業全体の概要を把握し、根本となっている課題を特定し、それを取り除くための仕組みづくりをするというのは、時間不足だけでなく、能力不足であった点は否めません。隔離期間中に読んだ「ザ・会社改造」の中で、三枝匡さん(元ミスミCEO)はプロ経営者の定義として第一に「どんな状況の会社に行っても、短期間で「問題の本質」を発見できる人」と述べています。しかし、新たな職場環境に適応し、与えられたタスクをこなすことで精一杯となってしまい、到底「問題の本質」にはたどり着けませんでした。これは、自分の中に経営のフレームワークを増やすとともに、実際の会社に入り込む絶対的な経験値の蓄積が必要なのだと思います。
課題② 課題解決のためのメンバー巻き込み力の不足
インターン先のようなスタートアップ企業で最も必要とされる能力は積極性(プロアクティブ力)ではないか、と思います。いくら課題を特定し、その課題を解決するための仕組みを構築できたとしても、それを日々の仕事に忙殺されている職場の人々に落とし込めるかというのは、全く異なる能力が必要になってくるのだと思います。現在の課題と新たに導入する仕組みの有用性を分かりやすく説明し、今から仕組みを変えることに伴って発生する作業や心理的労力を前向きに受け入れてもらうようにする必要があります。
課題③ 最低限のビジネス英語の不足
そして最後は、避けて通れぬビジネス英語力不足への対応です。海外とのテレビ電話会議に毎日のように参加させてもらい、議事録を取らせてもらったのですが、何かの事柄を説明し、ある事柄についてディスカッションする、という段になると、絶対的な話力の不足を実感しました。
というように、3か月のインターンシップは就業体験によるスキルアップ以上に、MBAに向かう前に自分の課題を特定することが出来た非常に得難い経験でした。あと、なんだかんだ言っても公用語が英語の職場環境に身を置いて、英語への不安感を多少なりとも和らげることが出来たのはよかったなと思います。また、インターンで得られた経験を明確に言語化するための助けになればと思って読んだのが、友達に餞別として渡された三枝匡の「ザ・会社改造」なのですが、これの感想も書ければな、と思っています。それでは。